「きぼう」の研究から生まれた新たな燃焼試験方法がJIS規格に制定

「きぼう」の研究から生まれた新たな燃焼試験方法がJIS規格に制定

ISSの実験棟「きぼう」に内にある固体燃焼実験装置(SCEM)を利用する研究・FLEREテーマの成果を元に開発された固体材料の燃焼性試験方法が、2024年2月に日本産業規格(JIS)K7201-4として制定されました。

FLEREテーマ(火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価)は、宇宙空間における国際的な火災安全評価の基準制定を目標とする実験テーマです。

閉鎖空間となる宇宙船や宇宙ステーションなどにおいて、「火災」は「急減圧」「空気汚染」と並び最も危険な事態の一つです。過去には1967年のアポロ1号では発射の予行演習で火災が発生し、宇宙船に搭乗していた3人の宇宙飛行士が亡くなるといった事故も発生しています。

火災を防ぐため、宇宙船などに使用する材料は原則としてNASAが定めた材料燃焼試験基準(NASA-STD-6001)で合格した燃えにくい素材が利用されています。しかし、この基準が定められたのは1998年、その前身となる評価の制定は1970年代であり、酸素濃度が一定の環境でしか計測できない、試験結果にばらつきが生じやすい、重力の影響を考慮していないなどの課題を抱えていました。

FLEREテーマでは「きぼう」の固体燃焼実験装置を利用することで、宇宙空間での様々な燃料データを取得し、それを元にこれまでのNASAの基準以外での条件で新たな燃焼性評価の基準を作成するとしています。

FLEREテーマで構築された新しい手法は、プラスチックなどの固体燃料が燃えにくくなる酸素濃度を示す「酸素指数(OI)」の微小重力における値を算出します。

今回JIS規格に制定された試験方法はその値を算出するために必要な「高流速条件での材料の酸素指数(HOI)」の計算方法を定めたものです。JAXAが日本プラスチック工業連盟などと協力して開発を進め、2021年に発行された国際標準規格ISO4589-4を日本の産業標準技術的変更を加えることなく制定したとJAXAは発表しました。


固体燃焼実験装置(Solid Combustion Experiment Module: SCEM)– JAXA公式You Tube

固体燃焼実験装置は酸素濃度や周囲流速、圧力など、様々な条件で微小重力における燃焼挙動を観察できます。

JAXAで開発が行われ、2020年5月に補給機「こうのとり」に搭載されて種子島宇宙センターから打ち上げられました。その後、ISSに滞在していた野口聡一宇宙飛行士により「きぼう」の多目的実験ラックに搭載されています。2022年からFLEREテーマによる実験が開始されました。

FLEREテーマはNASA、欧州宇宙機関(ESA)、仏国立宇宙研究センター(CNES)、独航空宇宙センター(DLR)などの計14機関が参画しています。

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