「なぜ?」に答える!今さら聞けない人工衛星のQ&A!(第2回)

天気予報、通信サービス、GPSなど私たちの生活に欠かせないものであるにもかかわらず、普段は意識する事は少ない人工衛星。第一回でも「人工衛星の高度」や「人工衛星の種類」についてご紹介しましたが、まだまだ疑問は尽きないのではないでしょうか。
知れば知るほど面白い、宇宙と地球をつなぐ小さなヒーローの世界へ再びご案内いたします。

Q1.人工衛星を作るのにはどのくらいの費用がかかりますか?

ISSのアームを利用して放出される人工衛星©NASA

人工衛星の制作費用は、大きさや利用されている技術によって変わります。
近年は小型の衛星が増えており、キューブサットのような10cm四方の大きさの衛星の製作費のみであれば50万円程度でも作ることが可能とされています。
大型の衛星であれば、製作費だけで数十億~数百億円とかかります。
しかし、人工衛星にかかる費用は製作費だけではなく、宇宙への輸送費用も必要です。
キューブサットの打ち上げでも、地上の輸送費に加え、ロケットの打ち上げの費用、ISSからの放出費用などを含めれば、総計で数百万円程度になります。加えて、打ち上げ後の運用をする必要がある衛星は、設備やパスのやり取り等でさらに費用がかかります。

Q2.人工衛星の寿命はどのくらいですか?

現在、多くの人工衛星の寿命は数年から15年程度とされています。
初期の人工衛星は1年~3年程度の寿命でしたが、近年の人工衛星は10年以上運用されることも多いです。
人工衛星が「寿命」を迎える状況は、燃料切れや機器の故障、「設計寿命」に基づく運用終了などいくつかパターンがあります。
人工衛星は正常に機能し管理・運用ができる期間「設計寿命」が想定されており、この期間を元に人工衛星の設計、燃料搭載量や運用期間の決定、さらに引退時期に合わせた次世代衛星の開発などが行われます。「設計寿命」はあくまで「この程度の年数動いてくれるだろう」といった予測であり、打ち上げ時のトラブルや運用途中での機器の故障で早期に運用が終了することや、逆に「設計寿命」をはるかに超える年数機能している人工衛星もあります。
寿命を迎えた人工衛星は、低軌道であれば地球へ再突入することによる処分が行われることがありますが、高軌道衛星などは回収の手段が無く、スペースデブリ問題に繋がっています。

Q3.人工衛星の動力は何ですか?

人工衛星の多くは太陽光電池によって電力が確保されます。また、加速時や軌道投入時の姿勢制御のための推進剤として、ヒドラジンや液体酸素、液体水素などの化学物質や、静電気や電磁力を用いる電気推進などが利用されることがあります。
近年は化学物質の扱いの危険性や環境汚染の懸念から推進剤の代替が進んでおり、亜酸化窒素や水などの燃料を利用する技術が注目されています。

Q4.人工衛星と探査機、宇宙望遠鏡の違いについて教えてください。

人工衛星、探査機、および宇宙望遠鏡は、主に行き先と任務の違いによって区別されます。
人工衛星とは、主に地球の周り(軌道上)を公転している人工物です。その主な目的は、地球観測による通信、気象観測、測位(GPS、みちびきなど)といった地上のサービスの長期提供に加え、惑星や宇宙環境を観測し、その仕組みを解明するための科学観測です。人工衛星は、「観測情報」を伝えたり、「状況」や「位置」を把握したりする役割を持ちます。
これに対し探査機は、地球以外の惑星や小惑星などでの活動を目的とする機材です。火星や金星のような地球以外の惑星の調査を行うほか、広大な宇宙の謎を解明するために遠くの天体まで航行し、未知の天体の観測やデータ収集を行います。
宇宙望遠鏡は、地球の衛星軌道上などの宇宙空間に打ち上げられた天体望遠鏡です。ガンマ線、X線、紫外線、遠赤外線といった地球大気に吸収されてしまう電磁波に邪魔されずに高度かつ高解像度のデータを取得することが可能です。

Q5.人工衛星はどのように地上と通信を行うのでしょうか?

ケープカナベラル基地のアンテナ©NASA

人工衛星と地上局の間の通信は、地上でも使われている電波を利用して行われます。
利用される電波は、Lバンド(GPS・移動体通信など)、Sバンド(気象衛星など)、Xバンド(軍事・防衛用途)Kaバンド(高速・大容量通信)など1~40ギガヘルツの高周波数帯が使われています。

地上局は、高精度のアンテナを用いて、衛星から送信されるTLM(テレメトリ)データを受信します。これには観測データや衛星の状態情報が含まれます。反対に、地上から衛星へはCMD(コマンド)データを送信し、各種制御(衛星自体の姿勢制御や軌道制御、観測系やミッション機器の制御など)を行います。

このように、アンテナを使用して衛星の状態を監視することを「追跡管制」と呼びます。追跡管制システムでは衛星から地上へ送られる信号を「ダウンリンク」といい、これによりTLMを受信します。一方、地球局(地上局)から衛星へ送信する信号を「アップリンク」といい、CMDを送信して日々の運用を実施します。
なお、地上局側(アップリンク)は電源に余裕があるため、大電力で高周波の電波を送信できます。一方、衛星側(ダウンリンク)は電力が限られているため、減衰を抑える目的でアップリンクよりも低い周波数を使用することが多くなっています。

近年は、より高速かつ大容量のデータ伝送を実現するため、電波(RF通信)に代わり光通信を用いた実証実験も進められています。

Q6.人工衛星同士が衝突する事はありますか?

人工衛星はそれぞれ異なる軌道や高度で周回しているため、衝突するほど接近することはほとんどありません。しかし近年、複数の衛星を連携させて運用するコンステレーション(衛星群)の増加により、軌道上は衛星で混雑し、接近リスクが高まっています。
※コンステレーションとは:多数の人工衛星を同じ目的で配置し、ネットワークのように連携させる仕組みです。代表例は、地球全体をカバーする通信や測位サービス(例:Starlink、OneWebなど)です。

過去にも衝突事故は発生しており、2009年にはアメリカの通信衛星とロシアの軍事衛星(運用停止中)が軌道上で衝突し、双方が大破。スペースデブリ(宇宙ごみ)が大量発生する事故が発生しています。

近年は、運用を終了した人工衛星やコンステレーション衛星、スペースデブリの増加により、接触ならび衝突のリスクは高まっています。衝突回避のための正確な位置情報の取得は現状難しい他に、回避行動には余計な燃料消費や衛星機能の一時停止などが必要となります。

Q7.人工衛星が増えていくと地球環境に悪い影響があるのでしょうか?

人工衛星の増加による地球環境へのリスクは主にスペースデブリの増加、大気汚染、天体観測の干渉・妨害などが挙げられます。
スペースデブリは特に深刻な問題で、2019年の調査では10cmを超す大きなデブリだけでもおよそ3万5千近くの人工物が軌道上にあると報告されています。現状では軌道上に残っているものが回収、廃棄させる方法が無い他、将来的には現状あるデブリのみならず、デブリ同士の衝突でさらに多くのデブリが生じ、(ケスラーシンドローム)人工衛星の運行の妨げになるなどの予測もあります。
また、人工衛星には大量のアルミニウムが使用されていることが多く、再突入の際にアルミニウムが燃焼する化学反応によりオゾン層破壊につながる可能性などが指摘されています。

Q8.人工衛星を個人で作って打ち上げることはできますか?

人工衛星の打ち上げは国や企業だけではなく、高校生や民間の団体が超小型の人工衛星「キューブサット(CubeSat)」の開発、打ち上げまで成功させた例があります。
キューブサットは組み立てキットを購入することもできますが、購入費用は数十~数百万に及ぶほか、衛星に機能を搭載するにはキット以外の部品を組み合わせ、プログラミングでCPUの書き換えなどを行います。
さらに、日本国内に所在する設備を用いて人工衛星の管理(位置、姿勢、状態の制御)を行う場合、「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」に基づき、内閣府の許可を受ける必要があります。
打ち上げはロケットへの相乗りや、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」からの放出(J-SSODなど)といった機会が提供されていますが、それを行う手続きも必要です。
人工衛星の組み立てから打ち上げ、運用まで一貫して個人(一人)で行う事は困難ですが、不可能ではありません。将来的にはより容易に人工衛星が作れるようになることも期待されています。

「なぜ?」から人工衛星を知る

私たちの頭上を常に飛び交う数多の人工衛星。肉眼では見えにくい存在でありながら、私たちの生活には欠かせない存在です。「どうやって動くのか」「開発がどれだけ大変なのか」などの基本的な事を知ると、遠くの人工衛星が少し身近に思えてくるのではないでしょうか。まずはこうした素朴な疑問から人工衛星、そして宇宙開発を知ってみませんか。

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