2025年宇宙のニュース振り返り
2025年も残りわずか。今年も長期活躍したロケットの引退や米国の新型ロケットの打ち上げ成功、日本人宇宙飛行士の活躍などが話題になりました。
この一年で注目された宇宙開発のニュースを振り返ってみましょう。
※ 2025年12月23日現在の情報です。
ロケット(人工衛星)打ち上げ編
1/16 新型ロケット・ニュー・グレン初打ち上げ(アメリカ)
ニューグレン打ち上げの様子 – Blue Origin公式YouTube
ニュー・グレンはAmazon創業者ジェフ・ベゾス氏による宇宙企業ブルー・オリジン社の新型ロケットです。
全長は最長98m、直径7mの2段式ロケットで、ペイロード容量(搭載できる衛星の総重量)は低軌道で45t、静止軌道では13.6tを運搬できます。また、ニュー・グレンの名称は米国初の地球周回軌道飛行を成し遂げたジョン・グレン宇宙飛行士にちなんで命名されています。
ペイロードには宇宙輸送機「ブルーリング」のプロトタイプ機が搭載され、軌道投入にも成功しています。
ニュー・グレンはSpaceXのファルコン9と同じくブースターの再利用が可能で、1回目の打ち上げ時には回収は失敗していますが、その後11月13日に実施された2回目の打ち上げ時に初めて回収に成功しました。
2/2 H3ロケット5号機、みちびき6号打ち上げ(日本)
みちびきは日本の衛星測位システムで、「日本版GPS」とも称されます。主にアジア太平洋地域を中心とした安定した位置情報測位システムの精度や安定性を補強する役割を担っています。
2010年に初号機が打ち上げられており、2018年から衛星4機で運用されていましたが、サービスや機能向上のために2026年までに7機体制に拡張する計画が進められています。「みちびき6号」はその追加分の最初の衛星です。衛星を増やす事により、スマートフォンやカーナビなど位置情報の誤差が現状の5~10mから1mまで小さくなるとされています。
将来的にどの衛星が故障しても測位機能を維持できるよう、11機体制の実現を目指すとされています。
5/29 小惑星探査機「天問2号」ミッション開始(中国)
四川省の西昌衛星発射センターから「長征3号乙」ロケットで小惑星探査機「天問2号」の打ち上げが行われました。
「天問2号」は中国初の小惑星サンプルリターンミッションで、地球の準衛星である「カモオアレワ」のサンプル採集を目標としています。カモオアレワは2016年と比較的最近発見された衛星で、月のように地球の周囲を公転することから「第2の月」とも称されます。大きさは40m〜100mほどの小規模な星で、月と衛星または隕石の衝突によって飛び散った破片から形成されたとされています。
天問2号は2026年7月までにカモオアレワに到着、サンプルは2027年末に帰還カプセルで地球に届けられる予定です。
6/29 H-IIAロケット最終機打ち上げ(日本)
およそ25年間運用されていたH-IIAロケットの最終機の打ち上げが行われました。
H-IIAロケットは2001年から気象衛星「ひまわり」シリーズ、「はやぶさ2」、準天頂衛星「みちびき」などの打ち上げを実施し、日本の宇宙開発の中核を担ってきました。高い成功率が特徴で、特に2003年の6号機の打ち上げ失敗以降は継続的な信頼性向上の取り組みが行われ、7号機以降は連続成功を記録、最終的には50機中49機が打ち上げ成功となりました。
50号機のペイロードには温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」(GOSAT-GW)が搭載されました。「いぶきGW」は環境省と国立環境研究所、JAXAが共同で開発を行い、温室効果ガスや水循環の観測を行うハイブリッド衛星で、詳細な気候変動のデータを把握し、社会への影響予測や対策に活用することを目標としています。
6/30 ホンダの再使用型ロケットが試験飛行実施
ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所が開発した再使用型ロケットが試験飛行を実施、日本の民間企業として初めて垂直離着陸に成功しました。
ロケットは全長6.3mの小型ロケットで、実験では飛行時間56.6秒の間に高度271.4mまで上昇、その後目標地点からの誤差がわずか37cmという高精度な垂直着陸を達成しました。
ホンダは、ロケット開発に自動車のエンジンや自動運転の制御などの技術を活かしているとし、2029年までに準軌道への到達能力を実現することを目指すと発表しています。
7/15 観測ロケットS-310-46号機によるスポラディックE層観測実験(日本)
鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所から観測ロケット「S-310」46号機の打ち上げ、およびスポラディックE層の観測が実施されました。
観測ロケット「S-310」は全長約6mの小型の固形燃料ロケットです。到達高度は150~200 kmで、気球や衛星では到達できない高度60 km〜200 kmの領域の調査に利用されます。
「S-310」46号機では高度90〜130 kmに出現することがあるスポラディックE層の観測が行われました。スポラディックE層は金属イオン(鉄、マグネシウムなど)で構成される薄い層で、電波を反射する特性で通信障害を引き起こすことがありますが、発生条件など詳しいことは分かっていません。
7/30 NISARミッションの実施(インド)
インドのスリハリコタのサティシュ・ダワン宇宙センターからNASAとインド宇宙研究機関(ISRO)が共同で開発を進めた地球観測レーダー衛星「NISAR」の打ち上げが行われました。
NISARは低軌道を周回し、12日ごとに地球全域の地表面と氷塊の観測を行います。NASA提供のLバンド(波長24 cm)とインド宇宙研究機関が提供するSバンド(波長10 cm)の2種類のレーダーを搭載しているのが特徴で、地震、火山噴火、地滑り、洪水などの地表の変化をセンチメートル単位で追跡できるとしています。
また、高解像度(モードに応じて3~10メートル)で広範囲(240 km超)の画像を取得することも可能で、データは森林バイオマス、土壌水分、地表面や氷塊の動きの測定などに活用される予定です。
10/26 H3ロケット7号機、新型宇宙ステーション補給機HTV-X1打ち上げ(日本)
H3ロケット7号機打ち上げの様子 – JAXA公式YouTube
HTV-XはISSへの物資補給を担う新型の宇宙ステーション補給機で、2009年~2020年の間に運用された「こうのとり」(HTV)の後継機です。「こうのとり」と比べて輸送能力が約1.5倍の約6tに向上、電源が必要な貨物や打ち上げ直前の詰め込みにも対応するなどの改良が行われています。
初号機となるHTV-X1はISSへの物資の運搬だけではなく、補給後はISSを離れて超小型衛星の放出や次世代太陽電池およびアンテナの展開、レーザーで宇宙機の姿勢を測定する技術の実証実験など技術実証ミッションを約3ヶ月に亘って行ないます。
HTV-X1はH3ロケットで最も打ち上げ能力の大きい「H3-24W」形態で打ち上げが行われました。「H3-24W」は固体ロケットブースター4本を装備し、フェアリング(ペイロードを搭載する部分)の直径が5.4mと規模の大きいペイロードに対応した形態で、今回が初飛行です。
予定通り軌道投入が行われたHTV-X1はISSに滞在する油井宇宙飛行士の操作するロボットアームで把持され、ISSへの結合が行われました。
11/17 火星探査ミッション「エスカペイド(EscaPADE)」打ち上げ (アメリカ)
エスカペイド打ち上げの様子 – Blue Origin公式YouTube
NASAの火星探査ミッション「エスカペイド」(EscaPADE Escape and Plasma Acceleration and Dynamics Explorers)が、ブルーオリジンの大型ロケット「ニュー・グレン」2号機によって打ち上げられました。
エスカペイドはカリフォルニア大学バークレー校が中心に開発した2機(ブルーとゴールド)同一スペックの小型探査機で、史上初の複数探査機による協調観測を実施します。2つの衛星を利用することで火星の大気や磁気圏の構造を同時観測し、火星における太陽風の影響を調査することを目標としています。
火星には2027年9月に到着し、その後11か月にわたり科学観測を実施する予定です。
有人宇宙飛行編
3/15〜8/10 大西卓哉宇宙飛行士参加ミッション「Crew-10」実施(アメリカ)
NASAによる10回目のCCP(Commercial Crew Program 商業乗員輸送開発)のミッションが行われました。
CCPは約半年ごとに民間企業が開発した宇宙船を使用してISSの乗員交代を行うミッションで、2011年から実施されています。近年では2022年のCrew-5に若田光一宇宙飛行士、2023年のCrew-7に古川聡宇宙飛行士が参加しています。
Crew-10の参加メンバーは大西宇宙飛行士(日本)のほか、アン・マクレイン氏(アメリカ)、ニコル・エアーズ氏(アメリカ)、キリル・ペスコフ氏(ロシア)の計4名です。大西宇宙飛行士は2016年以来2回目の宇宙飛行であり、今回の滞在でISSのコマンダー(船長)も務めました。
Crew-10ミッションは147.7日間に及び、その間はタンパク質結晶生成実験や細胞の重力感知の解明を目指す実験、火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼実験などが行われました。
4/24~11/4 神舟20号打ち上げ(中国)
神舟計画による有人宇宙船「神舟20号」は中国北西部の酒泉衛星発射センターから「長征2号」ロケットで打ち上げが行われました。
神舟計画は中国の独自宇宙ステーション「天宮」の乗員交代を行う有人飛行ミッションです。ISSと同じく半年ごとに実施されています。
搭乗メンバーは陳冬(ちん・とう)氏、陳中瑞(ちん・ちゅうずい)氏、王傑(おう・けつ)氏の3名の宇宙飛行士で、陳冬氏は3回目、他二人は初の宇宙飛行となりました。
「天宮」滞在中は宇宙生命科学、微小重力物理学、宇宙新技術などの分野で59の科学実験・技術試験のほか、4回の船外活動が実施されました。
6/25 ~7/14 アクシオム・ミッション(Ax-4) 実施(アメリカ)
アメリカの民間宇宙企業アクシオム・スペース(Axiom Space)が企画する4回目の国際宇宙ステーション(ISS)滞在計画が実施されました。
アクシオム・ミッションは民間人を中心に構成される宇宙滞在計画です。このミッションではコマンダーのペギー・ウィットソン氏(アメリカ)が指揮を執り、シュバンシュ・シュクラ氏(インド)、スワウォシュ・ウズナニスキ=ウィシニフスキ氏(ポーランド)、ティボール・カプ氏(ハンガリー)の計4名が参加、約2週間ISSに滞在を行いました。
インドでは40年ぶりの有人宇宙飛行であるほか、アメリカを除いた3ヶ国はISSの滞在が初めてかつ、それぞれの国で2番目の宇宙飛行士であるのもこのミッションの特徴です。
滞在期間中は60を超える研究活動や、同時期にISSに滞在しているCrew-10の参加メンバーとの交流も行われました。
8/2 油井亀美也宇宙飛行士参加ミッション「Crew-11」開始(アメリカ)
Crew-10の次期ミッションであるCrew-11には油井亀美也宇宙飛行士をはじめ、ジーナ・カードマン氏(アメリカ)、マイケル・フィンク氏(アメリカ)、オレグ・プラトノフ氏(ロシア)の4名が参加しています。油井宇宙飛行士は2015年以来2回目の宇宙飛行です。
ミッション開始直後、油井飛行士はISSに滞在していた同期の大西卓哉宇宙飛行士と軌道上で合流し、日本人宇宙飛行士2人が揃う貴重な機会となりました。大西宇宙飛行士らCrew-10のメンバーが帰還するまでの間、2人の宇宙飛行士のISSでの滞在の様子や宇宙からの写真などがSNSに投稿され、話題となりました。
油井飛行士らCrew-11のメンバーは2026年2月ごろまでISSに滞在する予定です。
10/31 神舟21号打ち上げ(中国)
10月にも「天宮」の乗員交代が実施されました。
メンバーは張陸(ちょう・りく)氏が務め、武飛(ぶ・ひ)氏、張洪章(ちょう・こうしょう)氏の3名で、武飛氏は32歳で宇宙飛行を行う中国人として史上最年少での参加となりました。
また、中国初となる軌道上でのげっ歯類実験を実施する予定で、オス・メス各2匹の実験用マウスも同時に搭載されています。
神舟21号の到着と同時に神舟20号のメンバー帰還が実施されましたが、帰還直前の点検で、帰還カプセルの窓ガラスにスペースデブリの衝突によるとみられる細かい亀裂が発見され、急遽ドッキングしていた「神舟21号」に乗り換えて帰還しました。
現在「天宮」に滞在しているメンバーはミッション完了後、11/25に無人で打ち上げられた「神舟22号」によって帰還する予定です。
2025年は未来への可能性感じさせる一年に
2025年の宇宙開発は、新旧交代の節目となる出来事も目白押しとなりました。民間企業の参入が加速、新しい宇宙機の開発が進み、火星や小惑星へのミッションも次々と実施されるなど、宇宙がますます身近になってきています。
2026年以降は月探査アルテミス計画の本格化や火星探査のさらなる進展など、ワクワクする展開が続きそうです。宇宙開発の未来から目が離せません。