プロジェクトマネジメントとは?実践のコツやPMBOKの役割を解説

プロジェクトマネジメントとは、チーム目標を達成するための管理手法の一つとして、近年注目されている考え方です。言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのような管理を指すのかご存知ない方も多いはず。 この記事では、プロジェクトマネジメントの定義や具体的な業務内容、実施時の手順などを解説します。また、現在プロジェクトマネジメントの主流の手法であるPMBOKの概要や業務に役立つ資格もご紹介しています。

プロジェクトマネジメントとは?

プロジェクトマネジメントとは、どういった業務を指すのでしょうか? まずは、プロジェクトマネジメントの意味や役割などの概要をご紹介します。

プロジェクトを成功させるための活動全般

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトを成功させるための活動全般を指します。Project Managementを略して、PMと言われることもあります。

プロジェクトマネジメントをもっと具体的に表すと、プロジェクト成功のためのプロセスを構築することと言えるでしょう。そもそもプロジェクトとは、目的を達成するための業務のこと。さらに、期限が決まっているメンバーの職種や職位が多様、といった要素を持っています。近年では、社内外で大小さまざまなプロジェクトが立ち、それに伴うチームが編成され、プロジェクマネジメントスキルの需要が高まっています。

プロジェクトマネ―ジャーの役割

プロジェクトマネージャーとは、プロジェクトマネジメントを担う人物を指します。チームをまとめる役割で、プロジェクトの実施責任者です。また、チームメンバーの業務効率や品質などのパフォーマンスを上げることが期待されています。

具体的な業務としては、プロジェクトの進行計画やプロジェクト遂行中のさまざまなトラブルへの対応、クライアントや会社への進捗報告などが挙げられます。

プロジェクトマネジメントのPMBOKとは?

プロジェクトマネジメントを実施する上で、現在の主流となる考え方がPMBOK(通称:ピンボック)です。PMBOKとは、Project Management Body Of Knowledgeの頭文字を取ったもので、プロジェクトマネジメントの知識・ノウハウを体系化したものです。

PMBOK第6版では、プロジェクトマネジメントを実施する上で必要とされる知識を「10の知識エリア」と定めていました。PMBOK 第7版が2021年に出版され、内容が大きく置き換えられました。

 

プロジェクトマネジメント実践の基礎知識

ここまでは、プロジェクトマネジメントの意味や役割についてご紹介してきました。ここからは、プロジェクトマネジメントを実践するときの基礎知識として基本のフローと求められるスキルを解説します。

プロジェクトマネジメントの基本フロー

プロジェクトマネジメントには、実施前に押さえておきたい基本のフローがあります。プロジェクトマネジメントを4つの工程に分け、それぞれの工程ですべきことやポイントをご紹介します。

  1. 目的・ゴールを明確にする
  2. 取り組み方の計画を立てる
  3. 計画を実施する
  4. クロージングする

1.目的・ゴールを明確にする

プロジェクトマネジメントのフローの1つ目は、プロジェクトの目的とゴールを明確にすることです。この工程を怠ると、チームで課題に取り組む上でさまざま支障が出てきます。具体的には、次のような問題が挙げられます。

▼目的・ゴールを明確にする工程を怠ったときの問題例

  • 途中でプロジェクトに対する疑問が生まれる
  • メンバーの意思統一ができずモチベーションの低下を招く
  • 優先すべきこと・切り捨てるべきことを適切に判断できない
  • プロジェクト終了時に目標達成できたのかを評価できない

目的・ゴールを明確にしたら、プロジェクトのメンバーに丁寧に説明しましょう。ポイントは、互いに納得できるまで対話を行うことです。ここで、目的・ゴールが明確に定まると、以降で発生するさまざまな意思決定の場面で適切に判断できます。

2.取り組み方の計画を立てる

プロジェクトマネジメントの2つ目の工程は、プロジェクトへの取り組み方の計画を立てることです。手順としては、大きく次の3つが挙げられます。

  1. ゴールから逆算してやるべきことを挙げる
  2. やるべきことに対して想定される課題をリストアップする
  3. 課題に伴うタスク処理のスケジュールを設定する

計画を立てるときのポイントは、現実的な計画を立てることです。理想や希望を強く反映した計画では、途中で無理が出てしまい、結果的にスケジュールの調整が必要となってしまいます。

ちなみに、課題をリストアップするときは、WBSというツールを用いると分かりやすくておすすめです。WBSとはタスクを分解して一覧化した表のこと。検索するとテンプレートが複数上がっており、チェックしてみると良いでしょう。

3.計画を実施する

プロジェクトマネジメントの3つ目の工程は、スケジュールに沿って計画を実施していくことです。具体的には、以下のような対応が求められます。

  • プロジェクトの進行具合・コストを把握する
  • 計画とずれが発生したら軌道修正する
  • 業務におけるトラブルに対処する

計画を実施するときのポイントは、定期的にリスクを見直すことです。これは、後々受ける大きな被害を回避できる可能性が高まるためです。計画を進行する上で予想外の変更・トラブルはよくあることで、リスクについても当初把握していたものよりも増えたり、減ったりする可能性があります。月に1回といったように期間を決めておき、都度メンバー同士でリスクを見直す機会を設けると良いでしょう。

4.クロージングする

プロジェクトマネジメントの最後の工程は、プロジェクト自体を無事にクロージングさせることです。計画の終了のタイミングに照準を合わせて、プロジェクトの全体の成果物を仕上げていきましょう。また、終了の条件を改めて確認しておくことも重要です。

終了条件を取り決めるときは、成果物の品質チェックの流れやチェックの基準まで明確にしておきたいところです。加えて、終了条件を書類に明記し、関係者全員が認識できる形にしておきます。くれぐれも「成果物の提出=プロジェクトの完了」とは限らないことを理解しておきましょう。

プロジェクトマネジメントに求められるスキル

プロジェクトマネジメントを成功させるためには、一定のスキルが求められます。以下の3つのスキルについて、必要である理由や身に付け方を見ていきましょう。

  1. 俯瞰できる能力
  2. コミュニケーション力
  3. 決断力

1.俯瞰できる能力

プロジェクトマネジメントを成功させるためには、プロジェクト全体を俯瞰できる能力が不可欠です。俯瞰できる能力とは、プロジェクトにおけるさまざまな問題を発見できるスキルとも言えます。問題の具体例として、あるタスクの進捗状況が良くない、メンバー間でモチベーションの差がある、といったものが挙げられます。

一つのことに集中しやすい性格である場合は、視野をできるだけ広げられるよう日頃から意識しましょう。プロジェクトに関する知識を増やすことで、俯瞰できる範囲を広げられる場合もあります。

2.コミュニケーション力

プロジェクトマネジメントに欠かせないスキルとして、コミュニケーション力も挙げられます。ここで言うコミュニケーション力とは、相手が伝えたい内容を理解する力と自分の考えを相手に適切に伝える力のことです。必要とされる場面はさまざまで、例えば、チームメンバーへの指示やメンバーからの悩み相談、上司や顧客への進捗説明、など。

コミュニケーション力を身に付ける上で大事なことは、日頃の会話や仕事のやり取りの中で、相手にできるだけ分かりやすく、齟齬が生まれないように伝える意識を持つことです。

3.決断力

プロジェクトマネジメントには、さまざまな場面で決断力が求められます。決断力が求められる場面とは、納期まで時間がない、人員が足りない、などです。多くのプロジェクトでは、利用できる資源が限られており、こういったトラブルに対して対処の判断を求められる場面が多々あります。このときに、優柔不断な対応をとったり、メンバーに決断を任せたりすると不信感を抱かれ、チームがバラバラになることにつながります。

決断できない理由の一つとして、選択肢から正しい答えを選ぶための判断基準がないことが挙げられます。そのため、決断する前に合理的に判断するためのデータを集める、データから適切に判断できない問題に対する方針を設けておく、といった準備をしておくと良いでしょう。

プロジェクトマネジメントに資格は必要?

プロジェクトマネジメントを実施する上で必須となる資格はありません。これまで培ってきた経験やスキルを生かして、十分に活躍している人もいます。しかし、案件によってはプロジェクトマネジメント関連の資格が必要である、就職・転職時に有利に働く、といったこともあります。キャリアアップしたい人やプロジェクトマネジメントをより体系的に学びたい人は、資格の取得を目指すと良いでしょう。以下は、プロジェクトマネジメントに関連する資格の一例です。

資格名 特徴 費用

PMP*1

  • PMI本部が認めるプロジェクトマネジメントの国際資格
  • 試験はPMBOK®ガイドに基づいて実施される

555ドル

P2M*2

  • 日本プロジェクトマネジメント協会が認めるプロジェクトマネジメントの資格
  • P2M資格は、PMC、PMS、PMR、PMAの4つの総称(PMC:コア知識を修得、PMS:全般知識を修得、PMR:基礎実践力を保有、PMA:高度な実践力を保有)
  • 試験はP2M標準ガイドブックに基づいて実施される

PMC:17,000円

PMS:22,500円

PMR:39,200円

PMA:220,000円

※税込み・決済手数料込み

プロジェクトマネージャー*3

  • 経済産業省が認定する国家資格
  • 試験要綱はIPAのページ*4で詳細記載

5,700円

※税込み

*2022年6月24日時点

*1 参考:PMI Japan|PMI®試験・資格について

*2 参考:日本プロジェクトマネジメント協会|P2M 概要・試験・資格制度

*3 参考:情報処理推進機構(IPA)|プロジェクトマネージャー試験(PM),スケジュール、手数料など

*4 出典:情報処理推進機構(IPA)|試験要綱・シラバスなど

まとめ

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトを成功させるためのあらゆる活動を指します。期待される役割は、プロジェクトを成功させるためのプロセスを構築することです。実施時には、基礎知識として、フローと求められるスキルを押さえておくと良いでしょう。プロジェクトマネジメントを理解する上で、PMBOKという体系的な考え方が役立ちます。

ちなみに、JAMSSでは、厳格な安全基準やプロジェクトを滞りなく進行する管理能力を求められる宇宙関連事業を担ってきました。そこで培ったプロジェクトマネジメントの知識やノウハウを活用できる「安全開発保証関連教育」サービスを提供しています。

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