2025年7月~12月期 宇宙開発イベントカレンダー

前半期に引き続き、2025年後半期も注目の打ち上げが盛りだくさん。
HⅡAロケットの最後の打ち上げをはじめ、民間のロケット開発、さらに日本人宇宙飛行士の活躍まで、注目の宇宙のニュースをチェックしておきましょう。

ロケット(衛星)打ち上げ

6/29 H-IIAロケット・50号機の打ち上げ成功

H-IIAロケット50号機の機体移動©JAXA

H-IIAロケット最後の機体となる50号機の打ち上げが行われました。
H-IIAロケットは2001年から運用されていた使い捨て型衛星打ち上げロケットです。気象衛星「ひまわり」シリーズ、「はやぶさ2」、準天頂衛星「みちびき」などの打ち上げを担い、長期にわたってH-IIAロケットは2001年から運用されていた使い捨て型衛星打ち上げロケットです。気象衛星「ひまわり」シリーズ、「はやぶさ2」、準天頂衛星「みちびき」などの打ち上げを担い、日本の主力ロケットとして活躍しました。
50号機の打ち上げは2025年6月29日午前1時33分、種子島宇宙センターにて実施されました。ペイロードには温室効果ガスなどの観測を行う「いぶきGW」で、打ち上げ後およそ16分後に軌道投入。50号機を含めたH-IIAロケットの打ち上げ成功率は98%と高い水準を維持しました。
H-IIAロケットの役割は後継機であるH3ロケットに引き継がれます。

7/15 観測ロケットS-310-46号機実験の打ち上げ成功(日本)

観測ロケットS-310-46号機打上げ©JAXA

スポラディックE層(Es層)の観測のため、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所から観測ロケット「S-310-46号機」の打ち上げが行われました。
S-310-46号機は全長約6mの小型の固形燃料ロケットで、人工衛星および観測気球での調査が難しい高度50km~250kmの調査を行います。
スポラディックE層(Es層)とは高度100km付近に急に現れる金属の雲のような塊で、通信障害や遅延が起きる等の影響がありますが、詳しい発生条件などは分かっていません。
打ち上げはスポラディックE層の発生に合わせて実施され、大気や地場などのデータの計測が行われました。

8/5 KUSHINADA-I 打ち上げ(日本)

小型SAR(合成開口レーダー)衛星「KUSHINADA-I」の打ち上げが行われました。
KUSHINADA-Iは株式会社QPS研究所が開発した小型SAR衛星で、多数の衛星を組み合わせて運用する「小型SAR衛星コンステレーション」にて、全36機打ち上げを計画されているうちの12機めとなります。
レーダー衛星は地上にマイクロ波を照射して画像を取得するため、天候に左右されずデータを収集できるのが特徴です。
「衛星コンステレーション」とは衛星を多数打上げ、全地球規模に及び通信や観測サービスを展開するシステムで、SpaceX社のスターリンクも衛星コンステレーションで運用されています。
iQPSは衛星コンステレーションによって地震や豪雨などの災害時の地形の変化、火山活動、インフラの状況などをリアルタイムで正確に把握し、迅速な救助や復旧活動に繋げることを目指すとしています。

9/24 IMAP打ち上げ(アメリカ)

IMAP打ち上げの様子©NASA

太陽圏の調査を行う探査機「IMAP(The Interstellar Mapping and Acceleration Probe)」の打ち上げが行われました。
「IMAP」はNASAによって企画されている太陽物理学のミッションです。太陽物理学は黒点や太陽風、磁場などの太陽に関する現象を調査する分野になります。
今回の調査対象となる太陽圏は「太陽風が届く範囲」を指し、ヘリオスフィア(Heliosphere)とも称されます。太陽風が影響する範囲は海王星、冥王星の距離よりもさらに大きく、具体的にどのあたりかまでは詳しく分かっておらず、ボイジャー1号および2号は太陽圏の境界の調査もミッションに含まれていました。
IMAPは太陽風や高エネルギー粒子のリアルタイム観測を行い、太陽圏の境界を詳細にマッピング、太陽風が宇宙空間でどのような作用を起こしているのかなどの調査を行う予定です。

10/26予定 H3ロケット7号機打ち上げ(日本)

H3ロケット7号機の打ち上げが行われました。
H3ロケットはJAXAと三菱重工業が開発を行った大型の衛星運搬ロケットです。前回は2025年2月に5号機が準天頂衛星を搭載し打ち上げが行われました。
今回のペイロードは新型の宇宙ステーション補給機「HTV-X」で、H3の中で最も打上げ能力の大きい「H3-24W」形態での打ち上げとなりました。
「HTV-X」は2009年~2020年にかけて運用された宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の後継機で、電源や必要な荷物や打ち上げ直前の搭載にも対応した、輸送能力・運用性を高めたものであるとしています。
「H3-24W」は固体ロケットブースター4本を装備し、フェアリングの直径が5.4m(ワイドサイズ)、重さおよそ16トンの「HTV-X」といった規模の大きいペイロードにも対応した形態です。
今回は6号機より先に7号機が打ち上げられています。6号機は固体ロケットブースターを使用しない形態での打ち上げが予定されており、2025年9月現在は燃焼実験などが進められています。
当初、H3ロケット7号機は2025年10月21日に打ち上げられる予定でしたが、天候悪化が予想されたことから延期が発表されていました。

11月予定 ハンビットナノ打ち上げ(韓国)

韓国の民間企業・イノスペース(INNOSPACE)によるロケット・ハンビットナノ(HANBIT- NANO한빛-나노)の打ち上げが予定されています。
イノスペースは2017年に設立された宇宙航空開発のスタートアップ企業です。2023年に試験機であるHANBIT-TLVの打ち上げを成功させており、現在はハンビットナノの開発が事業の中心となっています。
ハンビットナノは2段式ロケットで、全長21.8m、直径1.4mの小型ロケットです。高度500kmの太陽同期軌道(SSO)に最大90kgの衛星を投入することを目指しています。また、ミッションに応じてハイブリッドエンジン「ハイパー(HyPER)」、メタンエンジン「リーマー(LiMER)」を選ぶ事が可能な「ハイブリッドロケット」であることも発表されています。
製造には3Dプリントの技術が活用されており、生産コスト低減と期間の短縮を図っていることも大きな特徴です。
打ち上げはブラジルのアルカンタラ発射センターから行われる予定です。

12月予定 グリフィンミッション(Griffin Mission)実施(アメリカ)

アメリカの民間企業アストロボティック・テクノロジー(Astrobotic Technology)による月面着陸が実施予定です。
アストロボティック・テクノロジーは2007年に設立された宇宙航空企業で、主に月や惑星向けの探査機の開発を行っています。2024年1月には月面着陸を目指すペレグリンミッション(Peregrine Mission One)を実施していますが、月面着陸には失敗しています。
次の段階であるグリフィンミッションではペレグリンでの失敗に基づくデータを着陸機の設計に反映しており、ペレグリンで発生した推進システムの問題に対処しています。
グリフィンは、当初NASAの月面車バイパー(VIPER)を月の南極に輸送するために計画されていましたが、バイパー計画が中止となった影響で、大型の着陸機の実証実験に目標が変更されています。このためバイパーに相当する質量のペイロードを積載し、月の南極地域で着陸を行う予定です。

有人宇宙飛行

6/25 ~7/14 Ax-4 実施(アメリカ)

民間宇宙飛行ミッションであるAx-4(アクシオムミッション4 Axiom mission4)が実施されました。
アクシオムミッションは、2022年から実施されているアメリカの民間宇宙企業Axiom Spaceが企画した国際宇宙ステーション(ISS)滞在計画です。今回で4回目となり、実施されるのは2024年2月のAx-3から1年4カ月ぶりとなります。
クルーメンバーは元NASAの宇宙飛行士のペギー・ウィットソン氏(アメリカ)、シュバンシュ・シュクラ氏(インド)、スワウォシュ・ウズナニスキ=ウィシニフスキ氏(ポーランド)、ティボール・カプ氏(ハンガリー)の4名で構成されており、ペギー・ウィットソン氏は2回目のミッションAx-2にも参加しています。アメリカ以外の3か国の宇宙飛行士がISSに滞在するのは初。3人ともそれぞれの国の2番目の宇宙飛行士。インド人が有人宇宙飛行を行うのは41年ぶりです。
打ち上げは6/25にケネディ宇宙センターで実施され、翌6月26日にISSに到着、およそ14日の滞在の間、同時滞在しているCrew-10のメンバーとの交流をはじめ、藻類の研究やAIのデータ処理ユニットの実験、癌の早期発見に関する研究など60を超える実験が行われました。

8/1 油井亀美也宇宙飛行士ら参加、Crew-11打ち上げ実施

Crew-11打ち上げの様子©NASA

油井亀美也宇宙飛行士が参加するCrew-11が2025年8月1日11時43分(日本時間)に打ち上げとなりました。
Crew-11はおよそ半年ごとにISSに滞在する人員を入れ替えるミッションで、SpaceXのクルードラゴン(Dragon2)宇宙船によって実施されます。
Crew-11のメンバーはジーナ・カードマン氏(アメリカ)、マイケル・フィンク氏(アメリカ)、オレグ・プラトノフ氏(ロシア)、そして油井亀美也宇宙飛行士です。油井亀美也宇宙飛行士はISSに2回目の滞在、他のメンバーは初となります。
ISSの滞在中は深宇宙旅行における健康課題、再生医療、バクテリアの実験などが行われます。

8/10 大西宇宙飛行士ら Crew-10のメンバー帰還

Crew-10のメンバー©NASA

Crew-11と入れ替わりで、Crew-10メンバーが8月10日0時33分頃に地球に帰還しました。
Crew-10は2025年3月から実施されたミッションで、大西卓哉宇宙飛行士、アン・マクレイン氏(アメリカ)、ニコール・エアーズ氏(アメリカ)、キリル・ペスコフ氏(ロシア)の4名がおよそ5カ月間ISSに滞在しました。また、大西卓哉宇宙飛行士はISSにおける船長(コマンダー)も務めました。
ISS滞在中は低重力下における燃焼実験などをはじめとした200を超える科学実験やデモンストレーションが実施されました。
また、Crew-11のメンバー到着時は油井宇宙飛行士と大西宇宙飛行士がISSに同時滞在、実験や業務引継ぎの様子やISSからの写真をX(旧Twitter)に投稿し、話題となりました。

2025年後半も宇宙開発から目が離せない!

2025年後半も宇宙開発の動きは活発です。新しいロケット開発や衛星の打ち上げ、民間宇宙飛行など国際的かつ多彩な挑戦が続きます。こうした成果と計画は、次世代の宇宙開発に向けた大きな一歩となるでしょう。

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